毎朝の習慣があります。
それはプロテインを飲むこと。
最近はそこにセイロンシナモンを少し加えて、
香りと風味を楽しむのが日課です。
あの甘くて温かみのある香り。
朝の空気にふわっと立ちのぼる瞬間
ちょっと幸せを感じます。
ある日のこと
いつものようにスプーンで混ぜていたら、
ふとスプーンの先が
くすんでいることに気づきました。
「え、なんで?」
シナモンは茶色い粉末ですが、
ほんの少ししか入れていません。
それなのに、銀色のはずのスプーンが
少し曇って見えるのです。
最初は「洗い方が悪かったのかな」
と思いました。
でも、よく見ると
以前から使っていたスプーンのほうが、
くすんでいるような気がしました。
プロテインやお茶では変化していないのに…?
そうして、私は
ステンレスの種類や性質について、
少しずつ調べはじめることになりました。
Contents
ステンレスにも種類がある
カトラリーに使われているステンレスは
「錆びない金属」で、
全部同じだ思い込んでいました。
でも調べてみると、
ステンレスにも種類があり
耐食性や磁石にくっつくかどうか
ニッケル含有量などが違うことがわかりました。
代表的なものはこんな感じです。
| 種類 | 磁石 | ニッケル | クロム | 酸への耐性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| SUS430 | くっつく | ほぼ0% | 16–18% | △ | 安価スプーン、家電外装 |
| SUS304 | つかない | 約8% | 18% | ◎ | 家庭用カトラリー、鍋 |
| SUS316 / 316L | つかない | 約10–12% | 16–18% | ◎◎ | 医療用器具、海水環境 |
家にあったスプーンで実験してみた
まず、磁石テストをしてみました。
結果は──
以前から使っていたスプーンは
磁石にくっつく。
つまり、SUS430(フェライト系)の
可能性が高いことがわかったのです。
このタイプはコスパが良く、
日常使いには十分ですが
酸や塩分には少し弱い性質があります。
なぜシナモンでスプーンがくすむのか?
シナモンには、
ポリフェノールやタンニンといった
植物由来の微弱な酸性成分が含まれています。
この酸性成分が、SUS430のように
保護膜が薄いステンレスと反応して
表面の光沢をわずかに変化させてしまう。
味や健康への影響はほぼありません。
でも、なんとなく
「金属が変化する」こと自体に
抵抗を感じてしまいました。
その
「なんだか気持ち悪い」という感覚が、
今回素材について
知ろうとするきっかけになったのです。
ツヴィリングのスプーンは違った
そこで、次に手元にあった
ツヴィリングのスプーンを使ってみました。
アウトレットでストウブのお鍋を買ったときに
ついでに購入したものです。
磁石を近づけてみると──くっつかない!
つまり、このスプーンは
SUS304(オーステナイト系ステンレス)
である可能性が高い。
304は、ニッケルを含んでいるため磁性がほぼなく、
酸や塩分、熱にも強い高品質素材です。
実際、
このツヴィリングのスプーンは、
シナモン入りプロテインでもくすむことなく、
ずっと美しい光沢を保っています。
さすがですねー!
「素材を見る目」が養われていく
素材の知識を知る前と後では、
日用品への
“見る目”が少し変わります。
これまで
「なんかカワイイから」
「安かったから」と選んでいたものを、
「素材」「製法」「用途」で
選べるようになる。
それは、
なんだか暮らしの軸が
一本通るような感覚でした。
金属アレルギーの視点から見たステンレス
ここで気になったのが
金属アレルギーです。
「ニッケルやクロムが含まれているなら、
アレルギー反応を起こすのでは?」
そんな風に考えたんです。
実際、ニッケルは
アレルギーの原因金属として有名です。
でも、
カトラリーの
“合金”として安定しており、溶け出しにくい。
そのため、
通常の食器使用では
問題が起きにくいのです。
ただし──
皮膚に長時間触れるピアスや
ネックレスなどでは話が別。
汗や皮脂でイオン化した金属が
ごく微量に溶け出すと、
敏感な人は反応してしまうことがあります。
SUS316Lは「医療用ステンレス」
そのため、
SUS316Lという素材がよく使われます。
Lは“Low carbon(低炭素)”の意味で
より腐食しにくく安定した合金です。
医療用メスや
体内インプラントにも使われており、
金属アレルギー対応アクセサリーにも
多く採用されています。
一方で、
完全にアレルギー反応を防ぐわけではない点には注意が必要。
重度のアレルギー体質の方は、
チタン・樹脂・純金・純プラチナ
などの素材を選ぶのが安全です。
私が販売しているアクセサリーでも
ちなみに、私自身も肌が敏感なので、
アクセサリーには素材選びをとても慎重にしています。
実際に私のショップで取り扱っているアクセサリーには、
SUS316Lやチタンを採用しています。
見た目のデザインももちろん大切ですが、
「長く身につけられる安心感」こそが
本当の美しさだと感じています。
ステンレスの奥深さ
ステンレスという言葉を一つとっても、
これだけ奥が深いことに驚きました。
・磁石につくかどうかで、構造が違う
・成分の違いで、錆びやすさやアレルギーのリスクが変わる
・用途に応じて、最適な素材が選ばれている
そして何より、
日常の小さな「変化」に気づく感性が、
私たちの生活を丁寧にしてくれるのだ
と実感しました。
見えない部分に宿る美しさ
ツヴィリングのスプーンがくすまなかったとき、
「やっぱり良いものは違うな」
と思いました。
でも、それは単に
ブランドが有名だからではありません。
「素材の選定」や
「設計思想」の積み重ねが、
日々の使いやすさや耐久性に
現れているのだと思うんです。
“美しさ”って・・・
見た目だけじゃなく
「見えない部分の誠実さ」から
生まれるのかもしれません。
人間と同じですね。

「素材に心を向ける暮らし」
今回のシナモン事件(?)を
通して感じたのは、
「モノを知る」ことは
「自分の暮らしを守ること」
だということ。
どんな素材が肌に合うのか。
どんなものを毎日使いたいのか。
一つひとつの選択に
少しだけ意識を向けるだけで
暮らしは確実に美しく変わっていく気がします。
そしてその積み重ねが、
「お気に入りの一つ」に出会える確率を高めてくれる。
朝のプロテインに
シナモンをひと振りする時間。
くすんだスプーンに首をかしげた時間。
どちらも、私にとっては
大切な気づきの時間になりました。
おわりに
暮らしの中で、素材に目を向けること。
それは、
五感を研ぎ澄ませることでもあります。
香り、手ざわり、重み
音、そして見た目。
すべての感覚が
「心地よい」と感じるものを
選べるようになると、
日常のひとコマが
少し豊かに感じられる気がします。
次にカトラリーを買うときは
磁石を持参してみようかな(笑)
“くっつくか、くっつかないか”──
そこから広がる世界は、意外と深いんだな。
そんな事に気付いた
ひとときでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。












コメントを残す